凋落するグルメサイト(上):その理由

飲食店のグルメサイト離脱が加速しています。

飲食店、グルメサイト離れ 手数料が重荷に コロナで経営難(朝日新聞デジタル)

上記記事によると、グルメサイト大手「ぐるなび」の4月~6月期の契約店は7,500店の減少、「食べログ」の4月~7月期の契約店は1万店舗の減少とのこと。

背景には、従来から高額だった手数料が、コロナにより重荷となったこと。飲食店探しに、グルメサイトではなく、グーグルマップやインスタグラムなどを使う利用者が増加していること、があります。

また、1日から始まった「Go To イート」について「グルメサイトだけが儲かる仕組み」といった不満があることも影響し、今後、離脱はますます増加するものと思われます。

視野を「プラットフォームビジネス」全体に広げて見ると、離脱は、グルメサイトだけではなく、プラットフォーム全体の傾向であることがわかります。宿泊業界では、アパホテルの自社予約を促す「アパ直」。映像業界では、ディズニーのNetflixとの決別。流通業界では、ナイキのアマゾン販売終了、など。

離脱の理由は「不満」です。

プラットフォームはデジタルな仕掛けだけを持ち、リアルな資産や人を抱えないだけでなく、在庫リスクや設備稼働のリスクなども一切抱えない。一方で、リスクを全て事業者に担わせる財務構造であるのに、平然と厚いマージンを要求してくる。
「ZOZO離れ」に「アパ直」、企業の脱プラットフォームが進むワケ(ダイヤモンド・オンライン)

今後、企業のプラットフォーム離脱が、潮流となるのではないでしょうか。

グルメサイトにおいて重要なのは、企業つまり飲食店だけではなく、「利用者も」離脱しつつある、ということです。今後の市場構造が大きく変わる可能性があります。

今回は、「グルメサイト」の現状と、「飲食店」の再構築プランについて考察してみたいと思います。

飲食店離脱の理由

なぜ、飲食店はグルメサイトから離脱しているのか。理由は3つ。「費用負担の増大」と「不満の鬱積」、そして「効果の低下」です。

最初に「費用負担の増大」について。

飲食店の営業利益率は「5%」あれば優良とされています。しゃぶしゃぶ・日本料理大手の「株式会社 木曽路」は3.2%。他の上場企業も、多くが3%前後。飲食店は利益が少ないのです。

飲食店は、この少ない利益から、グルメサイトの費用を捻出する必要があります。現在のネット予約手数料は、1人200円(食べログ ディナー価格)。4,000円のディナー(※)の場合、「5%」にあたります。さらに、月額固定費が1万円~10万円。コロナによる売上減も加わり、飲食店にとって、グルメサイト費用が重荷になっている。このことが理由の1つ目です。

次に「不満の鬱積」について。

食べログは、2009年に掲載料(月額固定費)の有料化、2017年にネット予約手数料の導入、と段階的に「値上げ」を行ってきました。高額かつ安定した収入に、同社の主力事業「価格ドットコム」などを加えた、営業利益は「272億円」。営業利益率は「45%」に達しています(2020年3月期)。

業種が違うとはいえ、飲食店の営業利益率「5%」との格差はあまりに大きい。グルメサイトへの不満の鬱積。これが理由の2つ目です。

最後に「効果の低下」について。

「集客効果がわからない」「手数料を多く払った飲食店を優先的に表示している」といった、意見が散見されます。また、「ユーザー評価を信用していない飲食店が7割近く」(テーブルチェック調べ)といったデータもあり、グルメサイトへの信用が揺らいでいる実態が浮き彫りになっています。グルメサイトの効果が疑問視されている。これが理由の3つ目です。

これら3つの理由により、飲食店のグルメサイト離脱が進んでいるのです。

利用者のシフト

つぎに、グルメサイトの利用者の現状を見てみます。

利用者が、飲食店検索に使うツールは、グルメサイトから、インスタグラムやグーグルマップへシフトしつつあります。

インスタグラムにシフトしている理由は2つ。

1つ目は、食べたい料理が、「偶然見つかる」からです。

暇なときにグルメサイトを見る。そういった人はほとんどいないのではないでしょうか。一方、空いた時間にインスタグラムを見る人は、相当数いるかと思います。そのとき、偶然、美味しそうな料理が見つかる。食べたくなる。店を探し予約する。衝動買いならぬ、衝動「食い」してしまう。利用頻度が圧倒的に高いインスタグラムでは、このようなことが起こり得ます。

「ボーっとインスタグラムを見ていたら、表示された”肉をバーナーで焼く動画”があまりに美味しそうだったので、つい店に予約を入れてしまった」

「フォローしている著名人の食べているケーキが美味しそう。私も食べてみたい。店はどこ?」

どちらも、自然な流れです。偶然、食べたい料理が見つかった結果、グルメサイトを経由することなく、インスタグラムだけで店を決めてしまう。これが理由の1つ目です。

2つ目は、食べたい料理を「探す」のに便利なこと、です。

1つ目の「偶然」とは逆に「意識的」に食べたい料理を、探す手段としても、インスタグラムは有効です。

上述のテーブルチェック調査によると、グルメサイトの利用頻度が減った理由として、「自分好みのお店が見つからない」が26.7% を占めています。

これは、店の雰囲気もさることながら、自分の食べたい「料理」が見つけにくい、ということではないでしょうか。なぜ見つけにくいのか。グルメサイトは、条件に合った「店の」選択肢を提供し、そこから「選ぶ」からです。それに対し、インスタグラムは、画像や映像で、自分の食べたい料理を「探す」ことができる。これが理由の2つ目です。

偶然、食べたい料理が「見つかる」。意識的に「探す」こともできる。インスタグラムへのシフトが進んでいるのは、このためです。

一方、グーグルマップにシフトしている理由は、「お店」を探す手段として楽だからです。

友人とカフェで待ち合わせし、会ってから店を決める。そういった場合、グルメサイトで探すことは想像しづらい。グーグルマップで探すことになるでしょう。スマホと連動性が高いため、近隣の店をすぐ探せる。口コミがグルメサイトより信用できる。そして何より「楽」。そういった理由でグーグルマップを使うユーザーが増えています。

インスタグラムは、「食べたい料理」が見つかる・探せる。グーグルマップは「店」を楽に探せる。そのため、グルメサイトからのシフトが起こっているのです。

契約店減少による利用者減少。利用者減少によるネットワーク効果(※)低下。さらなる契約店減少へ。グルメサイトは負のサイクルに入りつつあります。

中小企業診断士 関谷信之

www.kakanri.com

「凋落するグルメサイト(下):飲食店再構築プラン」に続く
Youtubeにて補足動画配信中
「アゴラ 言論プラットフォーム」様にてレギュラー掲載中

[ 参考 補足 ]
※4,000円のディナー
「外食での特別な夕食」が平均3,826円→約4,000円を例とした。
「外食は食費? レジャー費? 外食の「レジャー性」への期待と予算を調査」(株式会社リクルートライフスタイル)

※ネットワーク効果
その製品やサービスの利用者が増えれば増えるほど、利用者の得られる利便性(効用)が高まること。携帯電話や、LINEなどアプリ、USB規格などが例として挙げられる。